いつの頃からか、
あるは、自分の手をじっと見つめるようになりました。
この頃から、目が覚めても、
暫くの間、泣かないことが増えてきました。
目が覚めたら、まずは、自分の手を見つめてみる。
そうして、飽きたところで泣くという新しいルーティンが始まったのです。
起きても泣かずに、あるなりに楽しんでいてくれる様子に、
少し楽になったななどと呑気なことを考えていましたが、
思えば、この頃に気付くべきだったのです。
起きても泣かない子が、少し大きくなったらどんなことをするのかを。
ここからもう少し先で、ヒヤリとする事件が起きることなど知らずに、
私は、自分の手を見つめるあるの姿を微笑ましく思うばかりでした。