忘れもしません。
あの事件は、あるが小学2年生のクリスマスイブの夜に起きたのです。
あるは成長と共に、
少しの物音で起きてしまうことが増えました。
あるが生まれてからの私たちは、毎年、クリスマスイブの夜に、
2人であるの枕元にへプレゼントを運んでいましたが、
2人でプレゼントを運ぶよりも、
1人の方が物音が出難いだろうという観点から、
私がプレゼントを置くという大役をいただいたのですが、
枕元にプレゼントを置いた時に、
ラッピング袋が出した僅かな音に、あるが起きてしまったのです。
私、思わず自分の布団へダイブして、
わざとらしい大きないびきまでもを演出し、
「ママは今、寝ていますよ」を全力でアピールしました。
ママ?
私の顔を覗き込むあるの気配を感じますが、
絶対に目を開けてはなりません。
真剣に、いびきを掻き続けること、数十秒間。
やがて、あるは諦めたのか、
枕元に届いたプレゼントを触った音が聞こえた後に、
また眠りに就いたのでした。
あの日の夜だけは、
私は世界一の女優であったと思います。
翌日、サンタさんが来てくれたことに喜びながらも、
ママはいびきを掻いて寝てたねぇ
と笑われてしまったことも、
どんなふうにいびきを掻いていたのかを真似されてしまったことも、
今となっては良い思い出です。