幼稚園行かない!
あの日の朝のあるは、突然に、
絶対に幼稚園へは行かないと主張し、
バス停までの道のりにある電柱や看板にしがみついて、
決して歩こうとはしませんでした。
意地悪をする子がいるから、もう幼稚園へは行きたくない。
泣きながらこんな主張を続けるあるの姿に胸が痛みながらも、
心を鬼にして、バス停まであるを引きずりながら連れて行きました。
強くなりなさいと。
私たちは、いつまでも、あるを守ってあげられるわけではありません。
ひとりで歩む強さを身に付けていかなければならないのです。
漸く、バス停へと辿り着き、お迎えのバスが来ると、
引率の先生が、嫌がるあるをバスに乗せてくれました。
先生に抱かれて、涙を流しながらバスに乗って行ったあの日のあるは、
一度も私を見てはくれませんでした。
そんなあるが乗ったバスを、涙を堪えて見送ったあの日の朝は、
あるが生まれてから初めて経験したとても辛かった朝でした。
思い返してみれば、あれは、
親としての初めての試練であったのかも知れません。
バス停からの帰り道、堪えることが出来ずに、
ひとりで泣きながら帰宅したことは、
誰にも話すことなく、ずっと胸の中にしまっていた苦しかった時間。
あの日のことを振り返り、また別な判断もあったのではないかと、
この頃とは違う別な視点を見つけることが出来たのは、
ここからずっとずっと先のことでした。