携帯電話を悪戯してしまう頃のあるを思い出しながら、
ふと蘇ったのは、あるが初めて、
携帯電話でお話をした日のことでした。
それまでのあるは、私が電話で話をしていても、
それを静かに見ているばかりでしたが、その時は突然にやって来ました。
この世界に誕生してから数百日。
日々、修行を積んできたあるは、
自分ももう立派に電話でもお喋りが出来るのだと考えたのかも知れません。
電話で話す私に纏わりついて、自分も話したいと主張をし始めたのです。
あるの声が先輩にも聞こえたのでしょう。
代わってみて
一度代われば満足するからさ
先輩はそう言って、
あるの初めての電話での話し相手になってくれたのでした。
先輩の言葉の通り、あの日のあるは、少しだけ電話を代わると満足し、
直ぐに電話を返してくれたのです。
これは駄目だよ。
ではなく、貸せるものは少しだけ貸してあげる。
これはあの日、
私よりも少し先に親になった先輩から教わったことでした。
本当に様々な人たちに助けて貰いながら、あるを育てて来ることが出来たのだなと、
改めて、これまで関わってくれた人たちに、感謝の気持ちを持って振り返っています。